エシカルファッションが注目されている。東京・世田谷区でファッション×サスティナブルの学校「エシカルファッションカレッジ」が1日限定で開かれ、エシカルファッションショー、ワークショップなどが行われた。ファッション関係者をはじめ、学生ら約1000人が参加し、高い関心を集めた。
ファストファッションに対抗
イギリスなどで人気が高いエシカルファッションは、近年、国内でも百貨店などで取り扱われるようになるなど認知度が高まりつつある。エシカルには「道徳的な」とか「倫理的な」といった意味があり、自然環境に負荷をかけない原材料を使用したり、製造や流通過程などにも配慮された商品のことで、服、アクセサリー、バックなどさまざまなものがある。海外では製造にあたる労働者が低賃金で迎えられたり、児童労働、悪辣な労働環境などが問題となっているが、弱い立場の労働者、生産者にきちんと対価を支払い、刺繍や手織り、染色といった地域の伝統や技術を継承するとともに、消費者ニーズも汲んだファッションを創造することを目指す。低コストで製造し、世界に大量に安く販売するファストフードになぞりファストファッションと言われる勢力に対し、対極的な立場をとるファッションスタイルとして注目されている。
専門家もクオリティーを高く評価
発展途上国の生活改善と自立を支援するフェアトレードと似ているが、著名デザイナーが多く参画しているためデザイン性が高いのがエシカルの特長。この日のイベントは「ファッションを通じ、ちょっといい未来を提案する。誰もがハッピーになるオシャレを考える」をテーマに企画されたもので、エシカルファッション関連の専門家を招き講演会が行われた他、自然素材の染料を使ったTシャツのプリントや、オーガニックコットンでバッグを作るなどワークショップが開かれた。ファッションショーでは、最新のエシカルファッションが紹介された。「これからのファッション」をテーマにした講演会の中で、有名ファッション雑誌の編集長などを歴任したファッションジャーナリストの生駒芳子氏は、「オシャレで、洗練されたものばかりだった」と高く評価した。
積極的に取り組む企業も
エシカルに積極的に取り組む企業も増えている。若者からはあえて着こんだ感じがする色落ちしたジーンズが人気だが、ジーンズ大手のリー・ジャパンでは、そのために行われている環境負荷の大きい染色工程であるケミカルウオッシュなどを止めたり、材料となるオーガニックコットンの生産地を訪れ、児童労働などが行われていないかなど現場をチェックし、基準を設ける取り組みを行っているという。同社の細川秀和氏は、今後のエシカルファッションの見通しについて、「『手間をかけて、どうしてそんなに面倒なことをするのか』といった声もある。しかし、そういう人でもおばあちゃんからもらったカバンを大切に使っていることはあるだろうし、(こうした目に見えない)価値をきちんと伝えることが大切。当社でもこうした取り組みを評価して、購入してくださるお客様が徐々に増えている。ビジネスとしてきちんと利益が出るようになれば、企業も多く参入するようになり普及が進む」。国内フェアトレードショップの草分け的存在のピープル・ツリーのサフィア・ミニー氏は、「少し高くても、長く使える、想いのあるブランドを購入するべき。自分の持っているお金をいい方向に使ってもえらえるようになればいい」と話す。
利益が出せるビジネスにできるかが普及の鍵
「効率、利益至上という誰かの犠牲のもとに成り立つ経済ではなく、これからはグリーンエコノミーの時代。エシカルファッションこそ、ラグジュアリーであるということを伝えていきたい(生駒氏)」と話す。ファッション業界への就職を目指す学生らは真剣な表情で聞き入っていた。エシカル商品の広がりが望まれる一方で、本当に自然に優しい材料で製造されているかや、労働者にきちんと対価が支払われているのかどうかといったチェック体制、さらには、高い利益を狙って偽物の横行、それを防止する認証団体も増え、統一されないといった問題点などが山積する。こうした一つひとつの課題を解決していくことが、普及の鍵になりそうだ。(ライター 橋本滋)