地球温暖化、地球環境問題への関心の高まりを背景として、世界で自然エネルギーが急速に拡大している。2013年末の自然エネルギーは世界の総発電量の増加量分のうち56%を占めるまでになり、世界全体のエネルギー消費量の約5分の1に達する見通しになった。一方で、自然エネルギーでリードする国々と日本が引き離されている現状が見えてきた。
世界で自然エネルギー導入が急増
地球環境問題が世界の共通課題として認識される中、とりわけ再生可能エネルギーへの関心は高い。6月4日、米国・ニューヨークで行われた、すべての人のための持続可能エネルギー国連フォーラムで、国連ドイツ政府代表部は「2013年の世界の自然エネルギー発電量は記録的な水準へ急増した」と報告した。REN21(21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク)がまとめた「自然エネルギー白書2014版」によると、世界の自然エネルギーの発電量は2012年から8.3%増加し、2013年末には1560GW(15億6000万kw)に達した。世界の総発電量のうち増加量分の56%にあたり、世界のエネルギー消費量の約5分の1に達する見通しだ。
自然エネルギー大幅増のけん引役を担ってきたのが新興国。地球環境問題に対する意識の高まりを背景に、普及の支援政策を採用する国が2005年の15カ国から、95カ国と6倍以上に急増。また、都市、州、地域レベルにおいて100%自然エネルギーで供給する体制へ転換する動きが広がる一方、ジブチ共和国、スコットランド、ツバルが2020年までに100%自然エネルギー源からの電力供給を目指している。
自然エネルギーのREN21のアルソロス・ゼルボス議長は、「議論の中心はもはや自然エネルギーがエネルギーサービスを担えるかどうかではなく、自然エネルギー100%を実現するために、導入ペースをどうすれば最大限加速できるのか、という点に変わっている。(実現には)現在の寄せ集めの政策や取り組みを継続させるだけでは不十分だ」と語った。
中国が突出。原発の発電量を上回る
自然エネルギーの内訳は、水力発電が1000GW(10億KW)で3分の1を占め、それ以外は太陽光、風力、バイオマスなどで560GW(5億6000万KW)。2013年の新規導入量は太陽光発電が38GW(3800万KW)で、風力発電の同35GW(3500万GW)を初めて抜いた。2012年、米国の風力発電市場の急速な市場の縮小を受け10GW(1000万KW)減少したものの、欧州などで洋上風力発電1.6GW(160万KW)が進み、記録的な年になった。
自然エネルギー累積の発電設備容量で上位なのは、中国、アメリカ、ブラジル、カナダ、ドイツ。中でも突出するのが中国で、自然エネルギーが爆発的な勢いで伸びており、2013年には原子力発電を上回った。世界全体の太陽光発電の新規導入量では、中国が3分の1を占め日本と米国がそれに続いた。風力発電でも長年、市場をけん引してきたドイツを中国、米国が追い越し、中でも中国はドイツの3倍になり、世界屈指の風力発電大国になった。温暖化、地球環境問題に消極的という印象がある中国、アメリカだが、すでに再生可能エネルギーの分野で日本より上位にいる。
ドイツの電気代が高い本当の理由
一方、日本は太陽光発電が大きく伸びたものの、人口当たりで見た太陽光の発電量はドイツに遠く及ばない。風力発電でスウェーデンと比較すると導入状況で3分の2程度に過ぎず、人口あたりで比べると20倍以上の開きがある。ドイツでは電力の取引料金は今後、劇的に低下する見通しで、風力発電では1KWHあたり4セントの国や地域も出てきているという。そこでよく耳にするのは、「ドイツの電気料金は年々、値上がりしている」という指摘だ。
ドイツの電気料金は2000年以降、右肩上がりで上昇しているが、それは自然エネルギーそのものが高いということではない。ドイツの電気代を高額にしているのは、再生可能エネルギーの買取負担だけでなく、付加価値税、自治体税、付加価値税などの税金が加わっているためだ。電気代を比較するとドイツの1KWHあたり30円(2011年)に対し、東京電力26.7円(2012年8月)となりドイツの方が高いように見えるが、税抜きで見るとドイツ20.6円、東京電力25.1円となり逆転する。
風力発電においては、現在では日本の電気代はドイツなど比べ、約3倍(太陽光発電の場合ドイツ、風力の場合スウェーデンとの比較)。しかも、核廃棄物の処理負担、損害保険の価格は反映されていないため、今後、日本の電気代は上昇していく可能性が高い。固定価格買取制度(FIT)により再生可能エネルギーを高値で買い取るようになり、住宅用太陽光の発電コストも直近2年で33.4円~38.3円から29.8円と下がる傾向にあるものの、日本の再生エネルギーは国際的に見て高くコスト削減が課題だ。
日本は自然エネルギーを活かせば資源大国になれる
地球環境問題への配慮、自然エネルギーの価格下落もあって、自然エネルギーへのシフトが世界的に進んでいる。また、2022年までに原発廃止を決めたドイツをはじめ、米国では2013年、5基の原発が運転停止、9基の新規原発の建設計画が中止になるなど脱原発が進む。
日本はというと、政府はエネルギー基本計画で自然エネルギーの数字目標を設定せず、順次原発再稼働を進める方針だが、世界を見れば原発推進の立場をとる少数派だ。電力会社が連携可能量という上限を設け受入れを制限していることが、国内の自然エネルギーの普及が進まない一因となっており、電力系統への接続の改善をはじめ、自然エネルギーの目標数値設定、規制の撤廃、電力価格の引き下げなど課題は多い。
再生可能エネルギーの普及は、地球環境問題にも有効
元スウェーデンのエネルギー庁長官で自然エネルギー財団のトーマス・コーベリエル理事長は、「これまで日本は資源がないと化石燃料や原発に頼ってきたが、地域エネルギー資源を有効利用すれば、資源豊かな国になれる。これまでEU諸国が経験した数々の失敗から学べるのも日本にとって有利な点」と話す。ドイツの取り組みや自然エネルギーについて「天候に左右されるので不安定」といった指摘もあるが、EUでは相互に電力を融通し合う仕組みがあって電力の供給状況がチェックされるとともに、電力が供給できなかったときの取り決めも供給者とユーザーの間できちんと決まっており、問題なく機能しているという。また、ドイツでは高い電気代を避け、隣国に企業が移っているとの指摘があることについて、同氏は「自然エネルギー導入の初期段階にそうした事例もあったが、最近は聞かない」と語る。
温暖化や地球環境問題においても有効な再生可能エネルギーへのシフトは世界の潮流でもある。再生エネルギーで遅れをとっている日本だが、2016年から電気の小売が全面自由化される。コストダウンには発電量の増加が不可欠であり、再生可能エネルギーが普及しやすい環境の整備が期待される。