世界エネルギー白書によると、自然エネルギーの割合は、日本はわずか2%。これに対して、ドイツは17%、デンマーク29%、そして、原発大国のフランスでも14%。オーストリア62%、ブラジル85%、アイスランドに至っては100%である。また、欧州では国を超えて送電網がつながっており、さらに北アフリカやロシアの送電網ともつながり、電力を融通し合う電力のネットワークが構築されている。
自然エネルギー財団が10月にまとめたドイツ視察報告書「エネルギーヴェンテ(大転換)を進めるドイツ」では、ドイツが2050年、自然エネルギー80%に向け、公正な競争環境が整ったことにより電力会社の新規参入が促されたことや、発送電分離後の送電部門への規制強化が大きく寄与するとの見方を示している。
ドイツも1999年の電力市場の自由化以前は、日本同様、広範に地域独占を行う大手電力会社8社が垂直直統合型で電力事業を行っていた。この他、自治体が自らの行政区域内の配電事業と小売りを行う市営の電力会社が900社ほどあった。大手電力会社は4社になり、市営の電力会社も大手電力会社による買収や統合によって700社に減少している。
日本でも「会計分離」と呼ばれる手法で2001年、部分的に電力自由化が行われ、十電力以外のPPS(特定規模電気事業者)の電力市場への参入が認められている。PPSは電力会社の送電線を借りて送電(託送)、販売できるようになったが、実はその実態は自由化に見せかけた「なんちゃって会計分離に過ぎない(環境エネルギー政策研究所 飯田哲也氏)」。電力会社は割高な託送料金を設定することで障壁を高くしているため、PPSの経営は厳しく普及が進まない状態にあるからだ。
ドイツでは電力自由化後、100社が電力事業に新規参入したが、この「託送料金の高止まり」が原因でほとんどの企業が撤退した。そのため、ドイツ政府は送電線事業者(大手電力会社)の自主性に委ねるだけでは自由化市場が機能しないと判断。2005年、独立した規制官庁「ネットワーク規制庁」を設置し、発送電分離に本格的に着手した。
ドイツのエネルギー政策について、日本が参考にすべきところが多い。報告書では日本への提言として、「発送電分離は送電部分への規制強化、発電、および、小売における競争を促し、安く安定的な電力システムの構築可能になる。自然エネルギー送電網の拡充が鍵」。
さらに、2030年、日本の自然エネルギー35%達成については、「太陽光、風力、地熱、バイオマス、水力など自然エネルギーのポテンシャルは日本が有利。法的枠組みが整えば、ドイツより早く導入が進む可能性がある」としている。
脱原発、電力ネットワークの構築、再生可能エネルギーの普及はワンセットになっている。間もなく総選挙。再生可能エネルギーを中心とした持続可能な新しい社会を選択するか、持続可能でない原発政策を続けるのか、の選択である。
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原子力発電所が撤去され、更地となった敷地(ドイツ)
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